自酔論

お酒と雑記

【西宮】きんさん

 

 

約一年前、ド狭い1Rに住んでいたのだけど、色々あってせわしなく一駅しか違わない距離のところに引っ越した。その家に住んでいた当時の私は生活が不規則なせいもあり、仕事が終わった後、自分の会社で終電までお酒を飲み、さらに終電で帰った後もバーで朝方までお酒を飲み、さらにドン引きなことにコンビニでロング缶を買い、自宅で飲み、起きたら身に覚えの無い空き缶が転がっているという、今思えば立派なアルコール中毒野郎であった。

 

何があったわけでもないが、酔わないと寝れない。酔わない一日なんて考えられない。今思えば健康診断に引っ掛からなかったのが不思議なくらいの生活を送っていた。

 

そんな時、ちょっとした事件が起こり、それを理由に引っ越しを決意した。引っ越し当日、最低料金で当日の運搬を行ったため、新居に着く頃にはもう日はどっぷりと暮れていて、少し寒かったのを覚えている。荷物を乗せたトラックを待っている間、付近を散策すると、アサヒのビールの写真が写っているフラッグが見えた。だけどそこはどう見ても普通の民家だった。

 

程なくしてトラックが着き、荷ほどきを開始したのだが、いかんせん疲れている。半分程終わったところで疲労困憊し、はす向かいにあるそのお店に向かうことにした。それが「居酒屋きんさん」に初めて行くきっかけだった。

 

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どう見ても普通の家である。割とどこにでも一人で入れる私だがなかなか勇気が要った。いざ入ると、懐かしい気持ちを覚える普通の玄関。靴を脱ぎ、再び現れた重厚な扉。入ると10席にも満たないカウンターは常連さんでいっぱいだった。誰やねんという視線をめちゃくちゃ浴び、とりあえず端っこに座った。

 

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お、多い。焼酎と日本酒合わせて100種類以上あるそうだ。「いらっしゃい」エプロンを着けた店主が出迎えてくれた。今日向かいに引っ越してきたんですと告げるとその場にいた常連さんが何人か話しかけてくれた。

 

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店主こときんさんは、奥さんとこのお店をやるためにサラリーマンを辞め、調理学校に通い直したそうでそれだけでもハートフルウォーミングなのに見ず知らずの私にお酒をふるまってくれたり、余っているお刺身をくれたりととても手厚く歓迎してもらったのを覚えている。

 

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お魚は毎朝豊中の市場まで行き、仕入れているそう。こんな新鮮なのにお酒もお料理も驚くほど安い。今では夕飯を作れないほど疲労困憊している日はここに来て帰っている。

 

あれから一年経った。お店に行けば温かく迎えてくれる常連さんやきんさんや奥さんがいる。何日か顔を出さないと心配して声をかけてくれる。ただ日々を浪費しているだけの自分に嫌気が差し、その日一日会社の人かパソコンとしか会話をすることしか無かった私が、求めていたのはこれだったのではないかと今では思う。

 

と、色々私情を絡めて書いたが結局そのお店にいる常連さんって、経営している人の人格に似た人が寄って来ていると思う。きんさんのようにおおらかだけど、芯を持っている人たちがここには溢れている。お酒も料理もそうだけど、そこがこのお店の一番の魅力である。

 

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居酒屋きんさん

〒662-0844 兵庫県西宮市西福町13-16

☎0798-63-6010

【営業時間】17:00~23:00(L.O.22:30)

【定休日】水・木曜日