自酔論

お酒と雑記

【神戸・住吉】さかなでいっぱい プラス

 

 

約二年前、三ノ宮にある某ライブハウスにTHE FOREVERSとLayneを観に行き、終演の頃には既に酔っていた私はそろそろ帰ろうと外に出た。肌寒かったのをほのかに覚えている。駅から5分程の場所にあるライブハウスの前の道は賑わっており、一息つこうとタバコに火を点けた。そんな時、ふと横を見るとインディーズバンドの音源を豊富に取り揃えているネットショップ、HOLIDAY! RECORDSのロゴが入ったトートバッグを持った女の子が立っていた。

 

よく人の心に土足で入って来るよねと定評のある私は(多分褒められていない)その子に興味が湧いてすぐに声をかけた。その子は一瞬驚いた顔をしていたが、同い年とわかるとすぐ打ち解けた。その出会いからお互い色々あった。何度も飲みに行ったし、私のあのド狭い家にも泊まりに来てくれたり、彼女はお酒が飲めないのに泥酔した私にも快く付き合ってくれていた。

 

そんな時、ふいに彼女と連絡が取れなくなった。SNSも急に消え、LINEもすぐに返ってこなくなった。原因はわかっていたのだけど何もできない自分に腹が立ちつつ、今はそっとしておくしかないと思い、悶々とした日々を過ごしていた。そうして半年程が経ったある頃、彼女から連絡が来た。そして久しぶりに会うことになった。

 

久しぶりに会った彼女は髪をばっさりと切っており、見た目こそボーイッシュになっていたが、相変わらずきっちりと畳んだハンカチを持ってゆっくりとお酒を飲みながらこの半年のことを聴き、私も話した。彼女が悩んでいたことは私の予想通りで、まだしんどそうではあったが、その日はある程度のところで解散した。

 

そしてまた半年程経ち、ふと彼女がどうしているのか気になった。思えば恋愛以外で一人の人間としてあれこれ気になるのは久しぶりのことだった。人の心に土足で入っていく割に人間関係は広く浅くでいいと思っていたから。

 

LINEを送ってみると、すぐに返事が返って来て、すぐに会う約束を取り付けた。

 

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JR住吉駅から歩いて5分程の「さかなでいっぱい プラス」。名前だけで行くことを決めた。行くまでは内装が竜宮城のようなのかと思っていたが見ての通り名前とのギャップよ。店主と仲良くなったら名前の由来を是非聞いてみたい。

 

店内は立ち飲み用のカウンターとテーブルがあり、席に座ると店員さんがiPadを持って来てこれで頼んでくださいと言った。そういうのはハイテクなのね。若干戸惑いを感じつつ酒飲みにはたまらない「メガ」の文字を発見したのでとりあえずメガトマトチューハイを頼んだ。

 

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(不覚にも写真を撮り忘れたのでInstagramから併用)

いや何杯分やねん。中ジョッキが450円なのに対し、メガジョッキだと680円とのこと。さらに立ち飲みだと580円らしい。コスパが良いにも程がある。

 

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これまた不覚にも料理の写真を撮り忘れたのだが、どれもこれも量が多くてとても美味しかった。店名の通りお魚も美味で、かなりお酒が進んだ。

 

そんな時に、彼女に恋人ができたと報告を受けた。今までのことと、お酒も相まっていい年した大人が居酒屋で泣くとは何事か。本当に良かったね良かったねと何度も言い、その日は別れた。

 

恋人ができたからといって人生バラ色の人もいれば、いてもいなくても変わらない人もいるだろう。ただ、彼女がヒトとして、生まれてきたことを喜べるほどのヒトに出逢えたことが嬉しかった。あと何年生きるかわからないけど自分にもいつかそういうヒトに出逢えたらいいなと思った日でした。

 

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さかなでいっぱい プラス

https://tabelog.com/hyogo/A2801/A280106/28040392/

兵庫県神戸市東灘区住吉本町2-17-2

☎078-854-3718

【営業時間】17:30~23:30 (L.O.23:00)

【定休日】?

 

 

【西宮】まるみ

 

 

一見、入りにくそうなお店好きだ。全然窓が無くて外から中が見えないような。好奇心旺盛なのかドMなのかわからないけど。

 

きんさんにも通い慣れてきた時、常連さんたちとの会話でカラオケの話になり、このへんでカラオケ歌えるとこなんてあるんですか?と聞いたところ「そりゃ駅そばでしょ!」と返ってきた。聞けば「昼はうどんや蕎麦が食べられるけど、夜は居酒屋営業になってカラオケも歌えるとこだよ」とのこと。なんやその興味しか湧かない店は。その常連さんと即座にそこに行くことになった。

 

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きんさんとは真反対の駅の南側にあると常連さんは言った。歩いて5分程で西宮市民御用達のフレンテ西宮に到着。何度も足を運んだことはあったがそんな店どこに......

 

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ここかーーーーっ!完全に盲点。「駅前 そば・うどん」だから「駅そば」らしい。あと「駅のそば(傍)」だから。誰がうまいこと言えと。ほんまの名前はまるみというそうだが未だに常連さんの中でまるみと言っても全然伝わらない。そしてちなみに未だにここで蕎麦かうどんを食べたことは無い(ごめんなさい)。

 

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雑多な感じがとても良い(褒めている)。そしてお酒も料理もめちゃくちゃ安い。カラオケは一曲100円。席はカウンターが10席程度で、テーブルは小さいものが一卓ある。料理もおでんから焼き鳥から軽いおつまみ、なぜか肉巻きまで置いてあり、いつも行く頃には無くなっていることも多々ある。

 

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観光地で生まれ育った私は、中2から声がガサガサのママがいるスナックに酒飲みの父親と行っていたため(飲酒はしていないよ)歌謡曲や昔のアイドルの歌がとても好きだ。客層は中年のサラリーマンから定年退職されたおじさまが多く、カラオケの履歴はほぼ浜田省吾。そして何故かギター(多分弾けない)とスタンドマイクやタンバリンが置いてある。ここは何屋なんや。

 

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マスターは最近まで半袖のめちゃくちゃ元気な人で、たまに眠すぎると僧侶のごとく椅子に座りながら寝ている。と言うのも、この辺では珍しく日付を超えても営業していて、ちゃんとお金さえ払えばある程度は飲ませて歌わせてくれる。心優しいマスターなのである。そして、平日でも昼から開けているのでお酒が飲める貴重なお店。なのでたまに22時ごろに顔を出すと昼から飲み続けている強者という名の酒クズがたまに居る。

 

そしてカラオケで95点以上出すと黒霧島か二階堂のボトル(一升瓶)をプレゼントしてくれるのだが、機械の中にちっさいおっさんが居て、そいつが邪魔をしてなかなか点数を出すことは厳しいらしいのだが先日、知人の中でも群を抜いて歌が上手い友人を連れて行ったところ、見事95点をたたき出した。が、その友人は焼酎が飲めないので全て譲り受けることになった。カラオケが歌いたい焼酎好きはぜひご一報いただきたい。

 

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まるみ

〒662-0911 兵庫県西宮市池田町11-1

☎0798-32-8595

【営業時間】?~0時くらい(多分)

【定休日】日曜日

 

 

 

【西宮】きんさん

 

 

約一年前、ド狭い1Rに住んでいたのだけど、色々あってせわしなく一駅しか違わない距離のところに引っ越した。その家に住んでいた当時の私は生活が不規則なせいもあり、仕事が終わった後、自分の会社で終電までお酒を飲み、さらに終電で帰った後もバーで朝方までお酒を飲み、さらにドン引きなことにコンビニでロング缶を買い、自宅で飲み、起きたら身に覚えの無い空き缶が転がっているという、今思えば立派なアルコール中毒野郎であった。

 

何があったわけでもないが、酔わないと寝れない。酔わない一日なんて考えられない。今思えば健康診断に引っ掛からなかったのが不思議なくらいの生活を送っていた。

 

そんな時、ちょっとした事件が起こり、それを理由に引っ越しを決意した。引っ越し当日、最低料金で当日の運搬を行ったため、新居に着く頃にはもう日はどっぷりと暮れていて、少し寒かったのを覚えている。荷物を乗せたトラックを待っている間、付近を散策すると、アサヒのビールの写真が写っているフラッグが見えた。だけどそこはどう見ても普通の民家だった。

 

程なくしてトラックが着き、荷ほどきを開始したのだが、いかんせん疲れている。半分程終わったところで疲労困憊し、はす向かいにあるそのお店に向かうことにした。それが「居酒屋きんさん」に初めて行くきっかけだった。

 

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どう見ても普通の家である。割とどこにでも一人で入れる私だがなかなか勇気が要った。いざ入ると、懐かしい気持ちを覚える普通の玄関。靴を脱ぎ、再び現れた重厚な扉。入ると10席にも満たないカウンターは常連さんでいっぱいだった。誰やねんという視線をめちゃくちゃ浴び、とりあえず端っこに座った。

 

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お、多い。焼酎と日本酒合わせて100種類以上あるそうだ。「いらっしゃい」エプロンを着けた店主が出迎えてくれた。今日向かいに引っ越してきたんですと告げるとその場にいた常連さんが何人か話しかけてくれた。

 

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店主こときんさんは、奥さんとこのお店をやるためにサラリーマンを辞め、調理学校に通い直したそうでそれだけでもハートフルウォーミングなのに見ず知らずの私にお酒をふるまってくれたり、余っているお刺身をくれたりととても手厚く歓迎してもらったのを覚えている。

 

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お魚は毎朝豊中の市場まで行き、仕入れているそう。こんな新鮮なのにお酒もお料理も驚くほど安い。今では夕飯を作れないほど疲労困憊している日はここに来て帰っている。

 

あれから一年経った。お店に行けば温かく迎えてくれる常連さんやきんさんや奥さんがいる。何日か顔を出さないと心配して声をかけてくれる。ただ日々を浪費しているだけの自分に嫌気が差し、その日一日会社の人かパソコンとしか会話をすることしか無かった私が、求めていたのはこれだったのではないかと今では思う。

 

と、色々私情を絡めて書いたが結局そのお店にいる常連さんって、経営している人の人格に似た人が寄って来ていると思う。きんさんのようにおおらかだけど、芯を持っている人たちがここには溢れている。お酒も料理もそうだけど、そこがこのお店の一番の魅力である。

 

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居酒屋きんさん

〒662-0844 兵庫県西宮市西福町13-16

☎0798-63-6010

【営業時間】17:00~23:00(L.O.22:30)

【定休日】水・木曜日

 

 

 

アイデンティティ

 

 

14歳からなりたかったグラフィックデザイナーという『肩書き』がついた。やりたかったバンドのアートワークもたくさんやった。19歳から客席から羨望の眼差しで見ていただけのアーティストにも会えた。血反吐を吐かなくても毎月口座にはお金が振り込まれるようになった。自分の稼いだお金でタクシーに乗ったり、新幹線で遠くまで行けるようになった。ありがたいことにSPICEを通じて色々お仕事をもらったりもできている。

 

ふと気づけば全て願っていたことで、全て叶っていたけどそれらは全て『日常』と化しており、ここ数年燃えカスのような生活を送っていた。

 

そんななんでもない日常が尊いのなんか十二分にわかっている。贅沢よ!まだ若いんだから!なんてクソバイスはもう死ぬほど聞いた。文字通り血反吐を吐いて死ぬほど頑張ったという自信はあるけど、文字通り達成したとて死ぬわけじゃないんだしこうして生きてるわけで生きてる前提でまたやりたいことを見つけたいだけなのに何も無かった。上がることも落ちることもない。

 

幼少期に変に習い事をたくさんしていたせいか、何を見ても興味が湧かないし、何をしても続かない。過去の自分のSNSやブログを発見し目標に向かって進んでいた頃の自分に絶望し、お酒を浴びる日々だけが続いていた。

 

行きつけの飲み屋に行っては「なんか趣味欲しいんだよね」とこぼし「あれは?これは?」とアドバイスしてくれる店主に対して怪訝な顔をする。完全にめんどくさい客だ。

 

ああ、このまま私は歌謡曲が流れるお世辞にもオシャレとも綺麗とも言えない店で、お世辞にも上手いとも言えないおっちゃんたちの歌を聴きながら、焼酎のソーダ割を飲む生活を死ぬまでするのだろうかと何もかも面倒になっていたのだけど、ふと気づいたことがあった。好きで続いていること、あるじゃん。「お酒」じゃん。「お酒を飲みながら人と話すこと」じゃん。

 

めちゃくちゃくだらないと思いつつ、自分の中では目から鱗ものだったし、めちゃくちゃ笑いがこみ上げてきたと同時に酷くワクワクしていた。完全に危ないやつだったと思う。「女が一人で酒飲んでるなんてみっともない」「毎日飲むやつなんて普通じゃない」「体に悪い」「酒にお金つぎ込むなんてくだらない」勝手にお酒を飲むということを害悪にしていたのは自分だということに気づいた。

 

もともと演劇の脚本家になりたかった私は、毎日狂ったようにルーズリーフに文章を書き込み寝食を忘れて没頭していた。なのに今となっては手帳に書いていた日記も、軽いブログも全然続かなくなってしまっていた。それも「面白い文章を書かなければ」という謎の強迫観念があったのかもしれない。

 

来年30歳になるという節目の時にそういう凝り固まった概念を捨てるのもアリなのではないか。完全に母親が見たら卒倒しそうなブログが始まろうとしているが、仕方ない、好きなんだもん。クセの強い店主も常連客も、どうやってお客さん呼んでるかわからんくらいの狭くて汚い店も、強烈に濃い焼酎をありえない値段で出すお店も好きなんだから仕方ない。

 

 

(かと言って、いつ誰と飲みました~なんぞツイッターにでも書いとけとなるので少しでもお店の利益になるようにちゃんと紹介という形で綴っていこうと思う。)

 

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